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新時代を象徴する、新次元の軽やかさ。「100年コート 粋SUI」

新時代を象徴する、新次元の軽やかさ。「100年コート 粋SUI」

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受け継がれる伝統の技術と創り出される新たな素材。その粋を集めて追求した純粋で美しい形。それは、軽くて優雅で心地よい。歴史が育んだ空気を吸い、時代のリズムに合わせて息を吐く。今に溶け込む新たなベーシックは、体と気持ちを軽くする。

もっと心地よく、もっと美しく。そんな想いの集大成

手入れを重ねながら、一生をかけて付き合えるコートをつくろう。そんな理念を形にした「100年コート」の誕生から10年。その節目に、SANYOCOATはこれまでにないトレンチコートづくりに着手しました。丁寧に。かつ軽やかに。そんな現代の生き方にフィットする、クラシックでいて心地いい一着を形にしたい。伝統のコートづくりを受け継ぎつつ、かつてない軽さを叶えた「100年コート 粋SUI」。新時代の上質を体現する、まったく新しい提案です。

驚くほどの軽さ。その秘密は「中空糸」にあり。

お手入れを重ね、一生付き合い続けられる本格コート。そのクオリティを保ちながら、これまでの常識を飛び越えるほどの軽さを実現する。これが「100年コート 粋SUI」のコンセプトです。“本格”であるためには、簡略化は許されません。たっぷりと生地を使い、しっかりと着丈や身幅をとり、必要なものは省かない。そのうえで極限まで軽さを突きつめるために着目したのが、「中空糸」とよばれる素材。文字どおり中身が空洞になった特殊なポリエステルをヨコ糸に、上質な超長綿をタテ糸に採用することで、従来のコットンギャバジンより約30%軽量なオリジナルファブリックを開発しました。しかしこの独自素材、完成にこぎ着けるまでには相当な困難が。開発当初は“こんな生地をつくるのは不可能!”という言葉まで飛び交っていたほど。その制作秘話を、ふたりの当事者に語ってもらいました。

不可能を可能にした、プロフェッショナルたちの想い。

  • SANYOCOAT チーフデザイナー / 原田 陽

    「軽量化しても、あくまで“本格”でなければならない。
    そのためには、かつてない挑戦が必要でした」

「この『100年コート 粋SUI』は、2022年に発表したハイグレードモデル『100年コート 極KIWAMI』をベースにデザインしました。クラシックコートの醍醐味であるドレープ美を表現するために、着丈は長く、身頃や袖にもゆとりをもたせているのが特徴です。本来、軽いコートをつくるためには、ディテールを簡略化したり生地の分量を減らすのがセオリー。しかしそれでは、『100年コート』のアイデンティティである“本格感”が失われてしまう。いくら軽くなっても、見た目で見劣りしては意味がない。そんな考えのもと、デザイン面ではオーセンティックを貫きました。となれば、鍵になるのは生地開発。しかしその点においても、あくまで本格を貫く必要があります。コットンならではの風合いを保ちつつ、きっちりと糸を打ち込んで高密度に織る。それでいて、できうる限りの軽さを突き詰める。そこで注目したのが、『エアロカプセル』という中空糸でした。マカロニのように内部が空洞化された特殊素材。これを従来のコットンと組み合わせれば、高密度に織り込んでも軽く仕上げられるのではないか。のみならず、コットン100%の弱点であった濃色の毛羽立ち・白化も軽減できるのでは−−そんなアイデアをもって、我々が厚い信頼を寄せる高密度先染め織物の専業メーカー「スタイルテックス」さんを訪ねました。代表の野原さんがお話しのとおり、技術的に大きな壁が立ちはだかり、断念を余儀なくされる寸前のところまでいきましたが、試行錯誤の末に素晴らしい生地を仕上げていただくことができました。どこまでも本格でありながら、気負わず身近に着られるトレンチ。今の時代に理想的な一着が完成したと自負しています」

  • スタイルテックス 代表取締役 / 野原 剛さん

    「私たちがこだわる“美しい無地”を
    新たな形で表現できたことに誇りを感じます」

「三陽商会さんとは50年以上のお付き合いになりますが、今回の生地開発は本当に苦心しました。なにしろ、中空糸のエアロカプセルをブレンドして高密度ギャバジンを織るのが難しい。織機がうまく動かず、すぐに止まってしまうのです。本来はアウトドアや寝装寝具に用いられる糸ですから、コート用としては非常に扱いにくいんですね。さまざまな方法を検討して、なんとか乗り越えました。それでも織機のスピードをかなり落とす必要があり、果たして発売予定日に間に合うよう生地を納められるのか……とヒヤヒヤしましたね。でも完成した生地を見ると、手前味噌ながらいいものができたなと改めて思います。エアロカプセルはポリエステルですが、風合いはコットン100%のギャバジンに負けずとも劣りません。その秘訣は、我々のこだわりである“先染め”にあります。これは糸の段階で染色を行うつくりかたで、生地を織ってから染色する後染めに比べて立体感のある風合いを実現できるのです。ただ、そのぶん技術的な難度が高い。とりわけ、“無地”を美しく仕上げるのが難しいのです。染めた糸に少しでも色ムラがあると、生地に織り上げたときまだらになってしまいますからね。とりわけ高密度な生地は使う糸が多いぶん、均一な無地に仕上げるのに技術力を要します。ちなみに、「100年コート 粋SUI」はおよそ1万本のタテ糸からできています。それをすべて同じ色みで仕上げなければならない……といえば、我々が越えなければならないハードルの高さをイメージしていただけるかと思います。ですので、美しく仕上がった無地の先染めコートは私たちの誇りなんです。エアロカプセルという、私たちにとっては未知の素材を使って、この美しい無地を表現できたことが本当に嬉しいですね」

彼らがいたから、「100年コート 粋SUI」ができた。生地づくりに不可欠な"相棒"

「100年コート 粋SUI」にふさわしい、不可能を可能にする生地をつくろう。そうSANYOCOATが決意した背景には、三陽商会が全幅の信頼を寄せる“相棒”の存在がありました。それが、野原 剛さんが率いる生地の企画販売企業「スタイルテックス」。そして野原さんの兄・民夫さんが経営する生地ファクトリー「ダイワインターテック」です。埼玉県比企郡に構えるダイワインターテックが生み出すコート生地は、世界トップレベルのクオリティ。糸染めから織りまでを一貫管理する生産体制、染色一筋30年以上の熟練職人を擁し、発色に優れた先染めにこだわる技術力、そして高密度に糸を打ち込んで織り上げる製織技術が特徴です。これまでの「100年コート」に使用されている生地はすべて、スタイルテックス&ダイワインターテックが糸1本から生み出してきたもの。長年にわたる彼らとの信頼関係があったからこそ、「100年コート 粋SUI」の革新的生地が完成したのです。

  • "体幹に乗る"型紙設計で
    さらなる軽快さを追求


    生地の軽量化だけでなく、“設計”の面からも軽快さを追求しているのが「100年コート 粋SUI」の特徴。その秘密は、“体幹に乗る”型紙にあります。身体の軸となる体幹にぴったりと沿うようデザインすることでコートの重量が分散され、重さを感じにくくする。長年コートづくりに専心してきたSANYOCOATのノウハウが結集された設計技法です。

  • 「光電子」ライニングの採用で実現する
    "やさしいあたたかさ"


    着脱式ライニングの背すべり部分には、「光電子」とよばれるハイテク素材の中わたを仕込みました。人間が発する熱を吸収・輻射し、遠赤外線によってあたたかさを生み出します。汗などの水分を吸収・発熱して“加温”する繊維とは異なり、自然でやさしい温もりを感じられるのが最大の特徴。機能系素材にありがちな“あたたまりすぎて暑い”を解消し、内側からも心地よさをサポートします。そしてチェック柄部分の素材には、繊細なスーパー120’sウールを採用。より軽く、なめらかな着心地を叶えました。外からは見えない部分も密かにアップグレードしています。ちなみにライニングの柄は「三陽格子」。歌舞伎の衣裳に使われる「翁格子」をもとに開発した「100年コート」のアイコンです。

軽やかだからこそ、丁寧につくる。それがSANYOCOATの美意識


「100年コート」の根幹をなすのは、青森に構える自社工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」の技術力。50年以上にわたってコート専業を貫いてきたそのクオリティは、世界屈指と自負しています。「100年コート 粋SUI」も、当然ながら同ファクトリー製。首へのフィット感を高めるため、手縫いでとりつけられた上襟、入念な職人技の賜物である“立つボタン”など、随所にクラフツマンシップが宿っています。「生地づくり」「生地加工」「縫製」をすべて日本で行った“純国産の証”である「J∞QUALITY」認証を受けているのも、既存の「100年コート」同様。軽やかさを追求しつつも、ものづくりは決して軽んじない。それがSANYOCOATの美意識であり、価値なのです。

「100年コート 粋SUI」は、メンズ・ウィメンズ各1型に絞って展開。メンズは肩のエポレットや襟のチンフラップなどクラシックな仕様を継承し、本格を貫きました。ウィメンズはより軽やかさを重視して、これらのディテールを省いているのが特徴です。

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構成・文/SANYO Style MAGAZINE編集部

 

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