三陽商会のファッションウェブマガジン

夏の季語って?俳句作りにも役立つ季節の言葉をご紹介

夏の季語って?俳句作りにも役立つ季節の言葉をご紹介

LIFE STYLE

テレビ番組などの影響で、俳句や短歌に興味を持つ人が増えています。そうした創作に役立つ「季語」というものをご存知でしょうか。季語とは、四季と新年、合わせて5つの季節を象徴する役割を持つ言葉です。天候や行事、動植物に関するものなど、さまざまな季語があります。

今回ご紹介するのは、立夏から立秋前日までの約3か月間を指す夏の季語。爽やかな暑さを感じる「初夏」、梅雨どきで蒸し暑い「仲夏」、そして燃えるような暑さの「晩夏」という分け方もあり、季語もバラエティ豊かです。

時候・天文・地理に関する夏の季語

まずは夏の時候、天文、地理に関する季語をご紹介します。


時候
・明易(あけやす)
「明易(あけやす)」は、夏の夜明けが早いことを表す季語です。早く明けていってしまう夜を嘆く思いが感じられます。春分を境に昼の時間は日ごと長くなり、夏至にはそれが最長になります。家庭菜園などをやっている方にとっては、早起きがしやすくて気持ちのいい時期です。


・薄暑(はくしょ)
「薄暑(はくしょ)」とは初夏の季語で、やや汗ばむほどの暑さを表します。大正時代に定着したもので、シンプルながらも夏の初めを感じさせる言葉です。


・水無月(みなづき)
「水無月(みなづき)」は7月頃の季語で、炎暑のために水が枯れ尽き、地上に水がない月という意味を持っています。暑さが厳しい時期の言葉ではありますが、夕暮れの涼しさに秋が近づいている気配を感じるのもこの頃です。


天文
・雲の峰(くものみね)
「雲の峰(くものみね)」は、夏の代名詞ともいえる入道雲を表す季語。強い日差しを受けて激しい上昇気流が発生し、巨大な積乱雲となります。江戸時代に活躍した俳諧師、松尾芭蕉は「雲の峰幾つ崩れて月の山」という俳句を詠みました。崩れた入道雲が山のようだという驚きが感じられます。


・五月雨(さみだれ)
「五月雨(さみだれ)」は梅雨の時期に降り続く雨を指す仲夏の季語。「さつきあめ」「さみだるる」とも詠まれます。

江戸時代の俳諧師、画家として知られる与謝蕪村は、『蕪村句集』に「さみだれや大河を前に家二軒」という句を残しました。雨で勢いを増した川、そしてそのほとりに建つ家を対比して表現しているのが分かります。


・涼風(すずかぜ)
「涼風(すずかぜ)」は文字通り、涼しい風を表す晩夏の季語です。夏の終わりには夏型の気圧配置が崩れ、熱風ではなく涼気を感じる風が吹きます。


地理
・富士の雪解(ふじのゆきげ)
「富士の雪解(ふじのゆきげ)」は、6月頃の富士山の雪解けを表す季語です。富士山麓の樹々は青々と茂りますが、山そのものは黒い地表を見せます。


・植田(うえた)
「植田(うえた)」は、田植えを終えたばかりの田んぼを表す仲夏の季語です。植えた苗が動かないよう、田水が張られ、周囲の風景や空が映っています。苗を植える田んぼのことも植田といいます。

生活・行事に関する夏の季語

次は生活や行事に関する夏の季語をご紹介します。


生活
・甘酒(あまざけ)
「甘酒(あまざけ)」はお正月など、冬に飲む温かい飲み物だと思う方が多いかもしれませんが、実は夏の季語でもあります。炊いた白米をつぶして米麹と混ぜ、密封して一晩置くとでき上がることから「一夜酒」とも呼ばれます。江戸時代には冷たい甘酒が暑さを和らげるとして夏に好んで飲まれていました。


俳句修行の旅人として知られた小林一茶は、『文化句帖』に「一夜酒隣の子迄来たりけり」という句を残しています。子どもが美味しそうに甘酒を飲む様子が目に浮かびます。


・団扇(うちわ)
暑い季節に欠かせないアイテム、「団扇(うちわ)」ももちろん夏の季語です。現代ではプラスチックなどさまざまな素材の団扇がありますが、もとは竹を骨として紙を張り、柄を取りつけたものでした。ちなみに開閉自在の扇子が考案されたのは平安時代です。


・冷奴(ひややっこ)
冷やした豆腐をさいの目に切った「冷奴(ひややっこ)」も夏の風物詩です。生姜やしそ、かつお節などの薬味がよく合います。お酒のおつまみとして好む人も多いでしょう。


行事
・出雲祭(いずもまつり)
「出雲祭(いずもまつり)」は、島根県にある大社町の出雲大社で行われるお祭りで、初夏の季語です。 5月14日から16日までの3日間で開催され、流鏑馬(やぶさめ)や田植舞など、さまざまな催しがあります。出雲大社は縁結び神社として、また八百万の神が集まる場所として人々の信仰が篤く、全国から参詣者が訪れます。


・海開き(うみびらき)
「海開き(うみびらき)」は晩夏の季語。海水浴場が開く7月10日前後を表します。遊泳の安全を祈願する神事をしてから海水浴場が開放され、海の家や売店も店開きとなるにぎやかな日です。

動物・植物に関する夏の季語

最後に、動物や植物に関する夏の季語をご紹介します。


動物
・鹿の袋角(しかのふくろづの)
これは耳慣れない言葉かもしれません。「鹿の袋角(しかのふくろづの)」は初夏の季語で、毎年生え変わる鹿の角に関係しています。鹿の角は春に落ちた後、皮膚で包まれた柔らかい角が新しく生まれてきて、この形が袋に似ているためこの名がつきました。


・巣立ち鳥(すだちどり)
「巣立ち鳥(すだちどり)」は初夏の頃に巣から離れていく鳥を表した季語です。春に巣の中で孵ったひな鳥は、初夏には飛べるまでに成長します。小林一茶は『文化句帖』の中で「其夜から雨に逢ひけり巣立鳥」という句を詠みました。


・蝉(せみ)
日本の夏といえば「蝉(せみ)」でしょう。蝉は晩夏の季語で、多くの蝉がいっせいに鳴くときの騒がしさを「蝉時雨(せみしぐれ)」といいます。鳴き声を雨に例えているのでしょう。


植物
・余花(よか)
初夏になっても若葉の中に先残っている桜の花を表す「余花(よか)」という季語があります。余花が見られるのは主に寒冷な地域や高山です。立夏前に残っている桜は「残花」で、立夏後に見られる桜は余花といわれます。


・竹の皮脱ぐ(たけのかわぬぐ)
「竹の皮脱ぐ(たけのかわぬぐ)」は、大きくなった筍の皮が根元から落ちることを表す夏の季語です。皮が落ちると筍は若竹となります。昔はこの皮が、笠や草履を編むなど生活に役立てられていました。


・バナナ
世代を問わず身近な果物、「バナナ」も夏の季語です。バナナの木は熱帯アジアやマレーシアが原産で、日本には明治時代にやってきました。現在も台湾やフィリピン、エクアドルなど、さまざまな産地のバナナが食べられています。


・向日葵(ひまわり)
夏に欠かせない花、「向日葵(ひまわり)」は晩夏の季語です。太陽に向かって花の向きを変える植物であると考えられたことから、この名がつきました。一面明るい黄色で満たされる向日葵畑は、訪れる人を明るい気持ちにさせてくれます。

俳句や手紙に使える季語

爽やかさ、日差しの強さ、蒸し暑さなど「夏らしさ」はたくさんありますが、人々の生活に根ざした季語や自然に関する季語からもこの季節の表情の豊かさを感じます。

現在では冬の飲み物と考えている人が多い「甘酒」や、あまりに日常的な食べ物である「バナナ」も、夏の風物詩として見てみるとまた違った味わいがあります。

俳句や手紙に季語を取り入れることで、より風情も増します。季節感のある表現方法を探している人は、本記事を参考にしてください。

編集&文/SANYO Style MAGAZINE編集部 写真提供/ぱくたそ

 

PAGE TOP