三陽商会のファッションウェブマガジン

第2の地球はないのだから――||「エコアルフ 渋谷」で体験する||

第2の地球はないのだから――「エコアルフ 渋谷」で体験する"みんなのサステナビリティ"

SPECIAL

「Because there is no planet B(=第2の地球はないのだから)」。これは、スペイン生まれの100%サステナブルブランド「ECOALF(エコアルフ)」が掲げるスローガン。次世代によりよい地球環境を受け渡すべく創業した、ハビエル・ゴジェネーチェさんの強い思いが感じられます。そうしたブランドの真髄と彼のこだわりが随所に詰め込まれているのが、3月13日にオープンしたばかりのアジア初となる路面店「エコアルフ 渋谷」です。
ともすると、社会貢献という堅苦しさゆえに敬遠してしまいがちな環境問題ですが、「エコアルフ」は、ギミック満載の店舗とタイムレスなデザインの商品によって、フレンドリーに提案しています。早速、オープン時に来日したハビエルさんを直撃。その魅力に迫ります。

――インパクトのあるスローガンに心を掴まれますね。


ハビエル 雑誌を読んでいるときにふと思いついたスローガンです。エコアルフのすべてがここに詰まっています。


――今ほどサステナビリティに関心がなかった2009年にエコアルフは生まれていますが、そのきっかけは?


ハビエル 2006年と2009年に息子2人がそれぞれ生まれたのですが、彼らの未来を考えたときに、やはり地球環境がこのままでは申しわけが立たないなと。それでサステナビリティについて深く考えていたのです。一方で、私はそれまで携わっていた、同じことを繰り返し環境汚染を続けるのファッションビジネスのあり方に飽き飽きしていたので、2008年に会社を売却。次なるビジネスについて、リサイクルに関わる財団や団体などを中心に模索をしていました。この活動は思うようには進みませんでしたが、その1年後、自分が関わっていたファッションとサステナビリティを結びつければいいと思い至り、自らサステナブルなファッションブランドを立ち上げることにしたのです。

――とりわけ海洋問題への取り組みが、他のブランドでは見られないほど徹底しているように映ります。


ハビエル そうですね。私たちは、エコアルフ財団を立ち上げて、海洋プラスチックゴミを回収・分別・再生し、製品化までしています。これらは、それぞれ各カテゴリーごとにパートナーシップを締結している業者とともに進めています。現在、エコアルフで使用するポリエステルの中には、海洋ゴミのペットボトルから再生したものがあります。


――経緯についてはいかがでしょう。


ハビエル 海洋に流される年間65万トンもの漁網の問題。漁師が獲物とともに引き上げるゴミの数々。これらの事実を漁師を通じて知ったときに、私はショックを受けました。陸ではゴミの回収システムがありますが、海洋に関してはほぼ皆無。そこで、「UPCYCLING THE OCEANS(アップサイクリング・ジ・オーシャンズ)」を掲げて、プロジェクトを進めています。

――日本でも、同様のファウンデーションを立ち上げ、海洋ゴミのリサイクルを進めるそうですが、その展望は?


ハビエル 今まさに三陽商会とともに「アップサイクリング・ジ・オーシャンズ・ジャパン」の活動を始めるために、日本における海洋ゴミの回収・分別・製品化を進める準備をしています。草の根運動となりますが、スペインでも行ってきたように、漁師や漁業組合など、実際に海で働いている人にアプローチをしていきます。最初は小規模でもいいので、この取り組みに賛同してくれる人たちと密な関係を築いてればと思っています。HP内でも賛同者を募っています。


UPCYCLING THE OCEANS(アップサイクリング・ジ・オーシャンズ):https://ecoalf.jp/


――一歩一歩、急がず着実に。という真摯さが伝わります。


ハビエル 私たちは、こうした海洋ゴミの製品化を「アップサイクル」と呼んでいます。廃棄されているゴミを衣服へと変換する。価値のないものから価値を生み出していくからです。私たちは、単に物語を語り継ぐだけでなく、作り、実行していく会社です。海洋ゴミやマイクロプラスチックについては、その問題を世間に報告するだけでなく、それをどう解消するのか、アクションを起こしていくのです。文句ばかり言うのではなくね(笑)。

  • ――環境問題にリーチするとなると、ユーザーは少し義務的なものとして身構えてしまいがち。それがフレンドリーに見えるのがエコアルフの魅力だと感じます。


    ハビエル 「情報」=気づかせることと、「教育」=教えることが最も大事だと考えています。それゆえにファッションというフレンドリーなインターフェイスを選んでいるともいえますね。次世代にボロボロの地球を渡すわけにはいきません。私たちのブランドを通じて、こうした問題を身近に感じてくれればうれしいです。

――確かにエコアルフを選ぶだけでも、問題解決の一助となっているように感じます。


ハビエル 誰もが多くの責任を負っています。消費者には選ぶ権利があってそれは強いもの。サステナブルであるというだけでは、簡単には選んでもらえません。だからこそクールなファッションを提供することで、興味や関心を持ってほしいと思います。例えば、スニーカーは、海洋ゴミのリサイクル素材で作られていて、ソールには海藻からの成分が使用されています。私のお気に入りです(笑)。


――アイテムのデザインコンセプトは? スポーティでアクティブに見えますが。


ハビエル おっしゃる要素もありますが、第一にアーバンなテイストを意識しています。街が似合う服ですね。スポーツやアウトドアを軸とするブランドを競合とは考えていません。デザインは、タイムレスを心がけています。流行の最先端を追求すればいつかは廃れてしまう。それは、結果的に新たなゴミを生み出すことになりますから。

――渋谷の新店舗にも、そうした思いがぎっしりと詰まっているようですね。


ハビエル 各国の他店舗でも地元の建築家を採用しています。ですので、日本においてもcinema inc.の坂巻洋平さんに依頼しました。コンセプトは「Sharing Ecology」。都市の文化をデザインや素材使いに息づかせているのです。そして、デザインのアクセントとなる部分には、持続可能な資源を使用しています。

――入るとすぐに、大きな岩のディスプレイがありますね。


ハビエル これは、「伊達冠石」という日本の火成岩。3トンありますよ。持ってみます?(笑)。什器や内装に使用してる素材には、持続可能な資源をベースに選んでいます。例えば、ラックに使われる竹は、伐採における環境負荷が木材よりも少ないうえに、和テイストも醸せます。

  • ハビエル また階段で使用されている鉄板は、鉄自体が何度でも再生して使用する素材。2階の壁や床を構築している木材は、建築現場で使用されたものの再利用です。日本の伝統をリスペクトしながらも、私たちの表現した世界観を見事に表現してくれました。

――ECOALFが、いかに物語を生み出すブランドかが伝わりますね。


ハビエル 2階のモニター前コーナーは、場合によってはイベントスペースに早変わりします。東京の中心である渋谷から、ユーザーに向けてサステナビリティに関する情報を発信していければと思います。ほかにも、海洋ゴミを使ったアーティスティックなディスプレーなどを配置して、目にも飽きさせない空間を目指しました。

  • ――おっしゃるように、第2の地球はない。自らがその責任ある一員なんだと思わされますね。


    ハビエル そう。ショップではそれを楽しみながら体験してみてほしいです。ユーザーもブランドも、誰もが同じ立場。同じ問題に直面するビッグチームなんです。エコアルフのウェアを通じて少しでもそれを感じてくれたらうれしいです。

エコアルフ 渋谷をご紹介!

1F

スニーカーや小物、メンズ&レディス の定番ウェアなどが並ぶ1階。土間を意識した赤土などを床に使用して和の要素も取り込む。階段下のフィッティングルームは、大きな鏡が特徴。カーテンの裏地に鏡文字でメッセージがプリントされており、自撮りのSNSアップなどを意識。

2F

2階は、シーズナルなアイテムが中心。新登場のヨガコレクションや、キッズウェアが並ぶ。スクリーン前の空間は、イベントスペースとしても活用可能に。


エコアルフ 渋谷
住所: 東京都渋谷区神宮前6-16-12 

営業時間 :全館 午前11時~午後8時

電話番号:03-6712-5178

※ 現在新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本での感染拡大のリスクが高まっていることから、お客さまおよび従業員の健康と安全面を考慮し、閉店時間を19:00に早めて営業しております。


撮影/比嘉 研一郎 編集&文/高村将司 ディレクション/Pomalo inc.

 

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