三陽商会のファッションウェブマガジン

WWD JAPAN.com編集長・村上要||×LOVELESSバイヤー・井上智和||2018年秋冬トレンド予測対談||「タブーなんてない」

WWD JAPAN.com編集長・村上要×LOVELESSバイヤー・井上智和2018年秋冬トレンド予測対談「タブーなんてない」

ブランドピックアップ

凄まじいスピードで移り変わるファッショントレンド。その"ツボ"を2018年下半期はどう捉えるべきか。ファッションメディアの編集長と、人気セレクトショップのバイヤーの対談からヒントを探ろう。

デザイナーたちが、自分とは違う個性を尊重しつつある

——早速ですが、今日のファッションのポイントを教えてください。
村上「ピンクが好きなので…」
井上「僕のテーマは、村上要を邪魔しない(笑)」
村上「あなたも十分派手です!」
——そんな仲の良いお二人に、2018秋冬のトレンドを予測していただくのが今回の趣旨です。
村上「身も蓋もない言い方かもしれませんが、“自由に着ればいい”という風潮が広がっています。今のデザイナーたちは、多様性、“ダイバーシティ”を尊重しつつある。結果、メンズ・ウィメンズ問わず、あらゆる面でフリーダムになっていますね」
井上「タブーがないんですよね。日本のマーケットが成熟してきたなかで、今までは服の着方に暗黙の了解がありました。ニットはシャツの上、Tシャツはシャツの下とか。現在はそういう制限がなくなってきて、ここ数年のノームコア、エフォートレスとは真逆の方向に向かっています」
村上「今は若い世代がファッションの中核に続々飛び込んでいる時代。彼らはあらゆる価値観をフラットに捉えています。ファッションと音楽とアート、オタク文化も含めて全部の価値は等しい。だから、ヨウジヤマモトのようなジャポニズム全開のアイテムも、アニメのキャラクターがドカンとプリントされたTシャツも躊躇せず気に入れば素直に着る。我々よりもさらに進んだリミックス世代である彼らには、今のブランドが考える“ダイバーシティ”、自由なマインドがハマるんです」
井上「メンズとレディースの境界線も薄れています。LOVELESSでは女性がメンズのアイテムを買っていくケースが多い。サイジングもバラバラで、同じ体型なのにMを着る人もいればXLを着る人もいます」

服の合わせ方にも約束事がなくなってきている

——“自由”といえば聞こえはいいですが、あまりファッションに詳しくない方にとっては難しいのではないでしょうか。
村上「正直、難しいとは思います。だからこそ逆に、『自分が好きなものを好きなように着ればいいんだよ』というメッセージをもっと発信しなければ、とも思うんです。例えば音楽が好きな人であれば、自分の好きなアーティストが着ている服、そのイラストが入った服から入るのもいいですね」
井上「そのムードを感じる服、みたいなことでもいいでしょう。なんとなく自分の好きなものと同じ匂いがするものを自由に着ればいい、といえば難しく感じないのではないでしょうか。とにかくタブーはないんですから。そういえば、先日パリコレのランウェイ会場で前の人の足元を見たら、靴が鯉でした(笑)。そのまんま鯉モチーフ。魚が好きなんですかね。日本人の方でしたけど」
村上「全部正解なんですよ(笑)」

どうせならみんな、着ていて楽しい服を着たいはず

  • ——では、あえてトレンドアイテムを挙げるとすれば?
    井上「男性だったらフーディでしょうか。ガバッと羽織りものとして着るような。どのブランドもリリースしていますね。ウィメンズではレースをあしらった服やワンピース。そこに、どれだけストリートやジェンダーフリーの要素を取り入れるかがポイントです」

村上「コレクションでは、ワンピースの上にモッズコートやダメージの入ったGジャンを着たスタイルも多かったですね。手持ちのワンピに大きめのアウターを着るだけで、俄然今っぽくなるでしょう。その筆頭がミリタリーアウター」
井上「トレンドの柄でいうと、総柄じゃない花柄、大きめのチェック柄など。それを柄ON柄で使うようなスタイルが注目ですね。印象に残っているのは、ケンゾーのランウェイです。自由に色やファブリックを取り入れながら、とにかく可愛かった」
村上「ケンゾーは毎シーズン、テーマがポジティブなんです。この時も、『カミングアウトしたゲイのお姉さんが結婚する前夜』みたいなストーリー。突拍子もなく複雑なんですが、最終的には家族がユナイトする。その幸せなムードって、今の時代感を象徴していると思います。どうせならみんな、着ていて楽しい服を着たいじゃないですか。その点で、家族や愛といった分かりやすいメッセージを投げかけるブランドは今、特に価値があると思います」

2人のイチオシアイテムをピックアップ!

  • Men's

    「コートを着なくなっている」というのが二人の共通見解。そこで注目なのがスポーツ&ストリートテイストが漂うナイロンブルゾン。【左】マウンテンパーカは、対談中に井上が試着した「GUILD PRIME✕Dickies(ギルドプライム✕ディッキーズ)」のコラボアイテムで「パターンから全て手掛けています」(井上)。【右】「A(LeFRUDE)E/(アレフルード)」のオーバーサイジングな1着。「パープルはトレンドカラーになると思います」(村上さん)。

  • Women's

    【左】「LOVELESS(ラブレス)」のスカートは、複数のスカーフを重ね合わせたようなデザインが特徴。「注目のパターン・オン・パターンであしらったアイテムです」(井上)。【中】フリルがついたシャツ生地のミリタリーブルゾンは「Frei EA(フレイエア)」のもの。「ミリタリーなのにフェミニンのミックス感が今っぽい」(村上さん)。【右】「フレイエア」のコートは、「ワンピースの上にガバッと羽織るのに最適です」(村上さん)。

村上 要/Kaname Murakami

1977年静岡県出身。「WWD JAPAN.com」編集長。地元の新聞社・静岡新聞で社会部の記者を経験後、ニューヨーク州立ファッション工科大学でファッションジャーナリスムを専攻。現地でのエディター・アシスタント生活を経て、株式会社INFASパブリケーションズに入社。「ファッションニュース」編集長などを経て、2017年4月から現職に。どんなコレクションピースにも臆せず袖を通す、生粋のファッションホリック。

井上 智和/Tomokazu Inoue

1981年東京都出身。2004年に三陽商会に入社。VMD・トレーナー等、店舗マネージメントを経て、2008年にセレクトショップ「ラブレス」のバイヤーに着任する。現在は同セレクトショップのバイヤーの他、EC、宣伝販促のマネージャーも兼任。

この記事の関連商品はこちら

Photo: Takuji Onda Interview&Text: Naoki Masuyama Direction: Pomalo inc.

 

PAGE TOP