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バイヤーズコレクショントーク||(ゲスト:ブリーフィングデザイナー ||小雀新秀さん)

バイヤーズコレクショントーク(ゲスト:ブリーフィングデザイナー 小雀新秀さん)

三陽商会クリエイティブディレクターの姉川輝天が、バイヤーズコレクションのセレクトブランドの中から、そのブランドにかかわる人と対談するバイヤーズコレクショントーク。今回のゲストは、人気バッグブランド「ブリーフィング(BRIEFING)」のデザイナー小雀新秀さん。MADE IN USAアイテムを主軸コレクションとして展開しているにもかかわらず、日本生まれというブランドの魅力やこだわりなど、姉川がじっくり話を伺いました!

アメリカ産にこだわる日本ブランド

姉川 前職にいたときに出会ってから何年くらい経ちますかね?
小雀 10年以上ですよ。懐かしいです。
姉川 僕の小雀さんに対する第一印象って、「ザ・デザイナー」だったんです。
小雀 そうですか?(笑)なんだか恥ずかしいですけれど。
姉川 勝手な気持ちではありますが、ブランドの位置づけとかインパクトの強さとか、バイヤーとして扱いたくて仕方ない、そんなブランドでしたから。
小雀 ありがとうございます。おかげさまで今年20年を迎えました。
姉川 20年ですか!素晴らしいですね。大好きなブランドのデザイナーである小雀さんとじっくりお話できるので、今日はブランド誕生のきっかけを伺いたいです。
小雀 もともと国内でバッグのデザインをやっていたんですが、昔からずっとアメリカでモノを作るということに憧れをもっていました。ブランド誕生のきっかけは、まさにそのチャンスを得たからなんです。アメリカでモノを作れるうえに、しかもそれがミリタリーファクトリーで作れるということになって。民間の仕事を請けてくれるミリタリーファクトリーなんてなかなかないですからね。
姉川 今年はUSAという曲がブレイクしたりしていましたが(笑)、確かに当時は今以上にアメリカへの強い憧れってありましたよね。ファッションだけじゃなく音楽やプロダクツも含めて、いろいろと。
小雀 決してミリタリーなモノを作りたいというわけではなかったんですけど、あの頑丈さというか、丈夫さというか、魅かれる要素はたくさんありましたから。最初、ミリタリーファクトリーからスタートするため、現地に行って打ち合わせをしたんですが、日本の工場とは全然違う雰囲気に圧倒されたのを今でも覚えています。基本的なことをいえば、そもそもサイズの単位も違いますからね。日本だとセンチやミリですが、アメリカはインチ。そういう違いにひとつひとつ慣れないといけない大変さはありました。アメリカの産業は軍がトップ。だから、僕らが知り得る技術というのは、ずっと前からアメリカの軍が扱っていたんです。アメリカのミリタリー工場でモノが作れるということは、そんなアメリカの軍の基準をクリアした貴重な材料を使えるというわけなんです。
姉川 素晴らしい。贅沢なことですよ、それは。
小雀 アメリカの軍で使用するものを作る工場ならでは、ですよね。だから、その工場の奥には大きな金庫があったんですけれど、本物のライフルとか拳銃がずらっと並んでいて厳重に保管されていました。
姉川 え?それはなぜ??
小雀 拳銃やライフルを入れるケースや鞄を作っている工場だから、作る工程で実物がないと重さやサイズだってわからない。命にかかわるモノを入れるケースや鞄を作っているわけだから壊れたりしたら大変だし、だからこそリアルにこだわっていた、ダミーではダメってことですよね。そういう雰囲気もアメリカの工場ならではですよね。

ミリタリーアイテムをタウンユースに

  • 姉川 アメリカの工場で作ったモノを日本のブランドとして売るという斬新なコンセプトが、ブリーフィングの魅力ですよね。とくにこだわったことはありましたか?
    小雀 アメリカ産のミリタリーモノは、強くて丈夫です。ただ、それが日本の街で浮いてしまったら意味がないですよね。昔からモノを包む風呂敷の文化があるように、日本には鞄を使う文化があります。ここまで鞄を使う国もない気がしています。そして、アメリカとはシチュエーションも違います。アメリカは車が主流ですが、日本は電車。ビジネスマンが使える、おしゃれだけど丈夫で機能的な鞄を作りたいという想いがありました。
    姉川 ブリーフィングは、丈夫かつ機能的で使いやすいのはもちろん、黒に赤のステッチというデザインにもインパクトがありますよね。そして、男性が本能的に憧れているミリタリーな要素もあったり、かゆいところに手が届く色々考えられたブランドだと思っています。持っていることがステータスになる、というか。小雀さんのこだわりがしっかり具現化していますよね。
    小雀 ありがとうございます。男性はモノが好きですよね。女性と違って、ギミックやウンチクも好き。ただ、見た目が可愛いというだけではなく、モノが好きな人に持ってもらいたい、喜んでもらいたい、そして、必要とされたいと思っています。
    姉川 ブリーフィングを使い始めてから、集めるのが楽しくて仕方ないんですよ。ビジネスバッグ以外にも、スーツケースやポーチ、ゴルフバッグなど、次から次へと出てくる。全部をブリーフィングのアイテムで揃えたくなるんです。女性には、大切な男性への贈り物としておすすめしたいブランドです。きっと男性からしたら、「お、よくわかってるな」って思う気がしますよ。このブランドさえおさえておけば、ライフスタイル、スポーツ系、ありとあらゆるジャンルの鞄が手に入りますもんね。
    小雀 そうなんです!ぜひ、カップルで直営店にお越しいただけると嬉しいですね。オンとオフ、両方使える男性用の鞄が主流でしたが、黒以外にもカーキやオリーブ、ネイビーなどカラーバリエーションも増えましたし、女性のものやユニセックスなものもありますから。
    姉川 今年20周年を迎えて、来年はついに21年目に突入ですが、今後はどうですか?
    小雀 ただ鞄が並んでいる「鞄屋さん」にとどまることなく、雰囲気づくりの大切さがあると思いますので、カテゴリーごとにアイテムを増やしていきたいですね。平面ではなく、奥行きのあるブリーフィングをどんどん深掘りしていけたらと思っています。
    姉川 今後も小雀さんのチャンレジ、そして新作アイテムを楽しみにしています。
    小雀 ありがとうございます。期待していてください。

  • 小雀新秀/SHINSHU KOSUZUME

    デザイナー。
    1966年生まれ。大手バッグメーカーでデザイナーとして活躍したのち、1999年セルツリミテッド(現ユニオンゲートグループ)に入社。鞄の原点はトラベルバッグだと語る小雀氏は、さまざまな鞄のデザインを手掛けつつ、ブリーフィングの立ち上げと同時にデザイナーとなり、数々の人気アイテムを世に送り出している。

Photo:Teppei Shiotani(t.cube) Direction:Pomalo inc

 

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