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【スタイリスト高塩の店舗探訪 Part5】三陽山長が伝授する、大切な一足を愛でる靴磨き術

【スタイリスト高塩の店舗探訪 Part5】三陽山長が伝授する、大切な一足を愛でる靴磨き術

着こなし解決ラボ

「三陽山長」ミッドランドスクエア店に訪れ、買い物を楽しんだスタイリストの高塩崇宏さん(【スタイリスト高塩の店舗探訪 Part4】参照)。取材兼買い物を終えたところで、まだやりたいことがあると取材チームを引き止める事態に。高塩さんがどうしてもやりたかったこととは......?

  • スタイリスト 高塩 崇宏

    栃木県生まれ。2009年に独立し、雑誌やカタログなど多くのファッションメディアの他、アーティストのスタイリングも手がけ、マルチに活躍するスタイリスト。ヤング誌から大人向けのメディア、アウトドアやゴルフも手がけており、ジャンルも多岐に。

  • 三陽山長 池田 浩輔

    三陽山長
    ミッドランドスクエア店 店長
    163cm
    本社でも高い信頼を得ている勤続15年の大ベテラン。柔和な接客で安心感も抜群。以前は同社のポール・スチュアートにいたとあって、スーツスタイルにも定評が。特技は、目を隠し手触りだけでどのモデルかわかる“利き山長”。ご来店の際に披露してもらってみては。

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「靴磨き(=シューケア)って、メイクするのと同じなんです」(池田)

――やりたかったことって?

高塩:ズバリ、靴磨き。自分で少しやったりはするけど、こうしてプロの方からお話を聞ける機会ってなかなかないからさ。


――確かに、そう言った意味では靴磨きも対応してくれる池田店長に聞くのは大正解ですね。

高塩:でしょ! 買い物でだいぶ時間押しちゃったけど、絶対やりたいと思って(笑)。付き合って!


――僕らも気になっていたので、ぜひ!

池田:かしこまりました。高塩さんが普段行っているケアってどんな感じですか?

高塩:時間がなくてほとんどできてないのはありますが、履く前に艶出しのスポンジで磨くくらいです。

池田:では、一般的なスムースレザーの靴磨き方法を今回はご説明しますね。

高塩:ありがとうございます!


――話の腰を折ってスミマセン。始まる前に聞きたいんですが、シューツリーって必須なんですか?

池田:いい質問ですね(笑)。絶対必要、めちゃめちゃ大事です。

高塩:そう。わかりやすく言うと、スーツ着て家帰って脱いだあと、その辺に投げ捨てているようなものだよ。


――なるほど。確かに型崩れしちゃうし、すぐダメになっちゃいそうですね。わかりやすいです。

池田:欲を言うと、一足に一つ使っていただきたいですね。特にいい靴には。シューケアと言う意味でも結構大事なんです。磨きの際に、履きジワを伸ばしてヒビ割れを起こすのを防いでくれるので。

高塩:シューケアの前段階で揃えておきたいアイテムってことですね。

池田:そうです。それでは始めていきましょう。

池田:先ほどご購入いただいた「匠 友二郎」を例としてお見せしますね。で、簡単に申し上げますと、靴磨きはお化粧と同じなんです。今この状態がビシッと決まってる、お出かけ直前の完璧な状態。

高塩:それはわかりやすい!

池田:普段履いていると、擦れて線傷のようなものが入ったりしますよね。その時に、クリームを塗って、擦って直すと言うのが、いわゆる化粧直しです。それを繰り返して続けていると、クリームが厚くなってきて厚化粧になってしまいます。革に栄養が全然入っていかない状態になってしまうんです。なので、一回すっぴんにします。

高塩:ケアすると言うのは、革に栄養を与えて馴染みやすくするためにも必要なんですね。

池田:そうです。メイク落としのようなクリーナーで一度すっぴんにし、乳液で栄養を与えてメイクしていく。そんな流れです。

高塩:本当に化粧と同じなんですね。

池田:これを全てこなすためには、いくつか道具が必要になってきます。

高塩:メイク道具ですね。


――一度すっぴんにする、と言うのを想像すると全部落としてしまって、見た目が変わっちゃう気がして度胸がいるなあ。

池田:そんなハードルの高いことではないのでご安心ください。古いクリームや汚れを落としていくと少しくすんで艶がなくなってくるんですけど、そこがストップの合図です。

高塩:じゃあそこまで気負わなくていいんですね。

池田:はい。で、まずやるのが砂利やホコリ取りです。これをせずにクリームを塗ってしまうと、ついていた砂利で靴が傷ついてしまうので。

高塩:今これはすっぴんの状態ですか?

池田:いえ、今は化粧している状態。外から帰ってきた靴だと思ってもらえれば。踵から爪先にかけてブラッシングします。今は流れの説明なので省いていますが、シューレースは外します。

高塩:慣れるまでは難しそう。でも、最初のこれが特に大事なんですね。

池田:そうですね。ブラッシングはできるなら、毎日やったほうがいいです。目に見えていなくても付いているものがあるので。

池田:で、ここから汚れ落としをクロスに染み込ませてすっぴんにします。

高塩:これは塗るイメージですか?

池田:拭き取るイメージに近いです。人肌と同じく、ゴシゴシすると肌を傷めちゃうので優しく行うのがコツです。

高塩:色が取れてくるから、黒い靴だと黒さが増してくるんですか?

池田:そうですね。それが終わったらクリームを手で塗り込んでいきます。

高塩:先ほどおっしゃっていた乳液的なものですね。手で行うのには理由があるんですか?

池田:手の温度で溶かしながら塗り込んでいくので、ブラシよりも手の方が手軽ですね。毛穴を広げて中まで浸透させていく。落として洗うとすぐ乾いてしまうので、保湿をしてもらう、そんな感覚です。

池田:塗り込んだら、クリームをブラシで伸ばしながら磨いていきます。

高塩:ブラシにも差があるんですか?

池田:そうですね。最初に使ったものは砂利とホコリ落としでしか使いません。あとはスエードの砂利落としにも使えます。

高塩:スエードだとブラッシングの仕方も変わります?

池田:毛を起こしながらしていく感じですね。磨き用のブラシがこちらになります。ホコリ取りは柔らかいブラシ、磨きは少し硬いブラシ、といった具合です。

高塩:細分化されているんですね。本当にお化粧と同じですね。


――めちゃくちゃわかりやすい。池田さんも心なしか、いいこと言ったドヤ感が滲み出てますし(笑)。

池田:そんなことないですよ!(笑)

高塩:やめなさい!

池田:ブラッシングまで終わったところで、艶出しができた状態になります。

高塩:これで終わりですか?

池田:いえ。艶出しまで終わったら、今度はグローブを使って全体を拭き上げていきます。

高塩:これはどういった目的で使われるんですか?

池田:余分なクリームを落としつつ、さらに磨き上げています。で、ここまで終わったら最後に、仕上げのブラッシングです。

高塩:締めの一手というやつですね。このブラッシングが肝なんですか?

池田:すごく大事ですね。クリームを塗って作った光沢は、いわば作り物。キラーンとした光沢なんですが、ブラシをかけて馴染ませながら余分なクリームを取ることで、自然な光沢になってくるんです。

高塩:ナチュラルなメイクになると。


――今の高塩さんが一番ドヤってる(笑)。

池田:ははは。基本の靴磨きはここまでです。そのあと、鏡面磨き(ハイシャイン)をしていくような流れです。

高塩:すごい。やり始めたらハマっちゃいますね。

池田:高塩さんも今履いて下さっている誠十郎で、ブラッシングだけでも実践してみましょうか。

高塩:ぜひ!

高塩:ブーツだと、革靴とはブラッシングがまた異なるんですか?

池田:この手のブーツはシューレースがないので、砂利が付着することはほとんどありません。なので、コバやサイドゴアの付け根部分を重点的にしてもらえれば大丈夫です。

高塩:なるほど。いや〜楽しいな! 池田さんの動きもカッコよかったし、真似したくなる(笑)。

池田:ははは。慣れればできますよ。せっかくなので、高塩さんのブーツで鏡面磨きをしてみましょうか。

高塩:え、いいんですか! 嬉しい。だいぶ履いているのであれですけど……。

池田:これは、大分やってますね(笑)。

高塩:なんだか恥ずかしいです。

池田:これに上塗りしていく形にしますね。ちなみに鏡面磨きできるのは、芯の入っている部分だけです。

高塩:そうなんですね。これはなんですか?

池田:これはワックス、蝋燭のロウです。あと使うのはクロスと水です。

高塩:道具も全然違うんですね。

池田:鏡面磨きは全く違う道具になります。ツウはブラシをするんですが、もうすでにお化粧を終えているので、ブラシをする必要もありません。

高塩:黒いロウなんですか?

池田:そうですね。ロウの成分に艶剤が入っています。これをしっかり塗り込んでいきます。

高塩:面白いな〜。休日の嗜みにしたい。

池田:休みの日にやって、気持ち新たに月曜日から履いていく方も多いですね。

高塩:これがルーティンの大人って、カッコいいですね。子供とやりたい。奥さんには理解されないけど(笑)。何してんの? って言われそう。


――でもこれからは、お化粧してるって言えるから、理解してもらえるのでは?

高塩:確かに!

池田:塗り込んだら、クロスを使ってワックスを靴に馴染ませていきます。

高塩:水は何に使うんですか?

池田:ワックスを塗ったことでできた膜を水で広げていくことで、光沢に生まれ変わります。

高塩:なるほど。

池田:水はほんの一滴程度で大丈夫です。使い過ぎると、革に浸透してしまい劣化してしまうので。

高塩:ロウをしっかり塗り込んでいたのは、革に水が染み込みにくくするためでもあるんですか?

池田:そうですね。薄く馴染ませて水気を取るために、布を巻いた指で磨いていきます。この工程を理想の光沢になるまで繰り返していきます。

高塩:うわーすごい!

池田:これはすでに下地ができているので、すごく手軽です。3、4分くらいでできちゃいますね。

鏡面磨き後(写真左)、鏡面磨き前(写真右)

――全っ然違う! 何コレ!

高塩:こんなに違うんですね! ヤバい!

池田:化粧して出かけて帰ってきてから崩れたお化粧と、それを直した後、という感じですかね。

高塩:一目瞭然ですね。


――見たらわかる、すごいやつやん!(笑)

池田:本来は最初からやっていくのでもっと時間がかかります。早い人だと30~40分くらいですかね。僕らはじっくり丁寧にやらせていただいているので、1時間頂いています。

高塩:でも1時間で新品に近い光沢に持って行けるんですね。日々のケアをすることを考えれば、本当に何十年も使えますね。


――それでは、高塩さん。左足はご自身でやってみましょう!

高塩:うん。……なんか左足からクレームが来そうだから、池田さん、お願いしていい?(笑)


――左足が「なんでお前がやんだよ!」って?(笑)

池田:ははは。かしこまりました(笑)。

高塩:いや〜、面白かった。ありがとうございました!

  • 三陽山長 ミッドランドスクエア店

    住所:愛知県名古屋市中村区名駅4-7-1 3F
    電話番号:052-561-5315
    営業時間:11:00〜20:00 ※ミッドランドスクエアの営業時間に準ずる

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撮影/舛田豊明 スタイリスト/高塩崇宏 構成&文/細谷駿人 ディレクション/Pomalo inc.

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